喜多屋IWCの道のり
引き継がれる思い
創業約200年の喜多屋(福岡県八女市)の蔵に入ると、神棚に「芳醇爽快」と書かれた板が飾られています。
これは、喜多屋の理想とする酒を表す言葉で、蔵元に代々引き継がれてきました。
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香り高く、味わい深い「芳醇」と、さわやかで切れのある「爽快」。
一見、相反する言葉に思えますが、喜多屋の木下宏太郎社長は「両立できる」と断言。
2013年夏、遠く離れたロンドンで、喜多屋の理想の酒は、「チャンピオン・サケ」という勲章とともに、現実のものとして認められました。
理想を現実にする力
木下宏太郎社長は「酒造りは微生物と対峙しながらの仕事なので、なかなかうまくいかないことも多いです」と言います。
喜多屋では、うまく酒造りをするために、冷房設備など積極的に蔵の設備投資を進めます。
「酒造りはサイエンス」と木下社長が言うように、科学的なデータを重視。
そこに、人間の感性も織り交ぜながら、理想とする酒を追い求めてきました。
そんな理想が、現実となった酒ができます。
2013年のIWC(インター・ナショナル・ワインチャレンジ)の日本酒部門に出品した「大吟醸 極醸 喜多屋」。
「自分たちの目指す酒だ」と蔵人みんなが思ったそうです。
酒は嗜好品で、味わいの感じ方も十人十色。
なかなか蔵人全員が納得できる酒は難しいと思うのですが、「みんなが同じ気持ちになった初めての経験」(木下社長)が、IWC2013に出した「大吟醸 極醸 喜多屋」だったといいます。
世界への影響力
IWCは世界で最も権威と影響力のある酒類競技会と言えます。
最難関のワインの資格「マスター・オブ・ワイン」の保持者らが審査するからです。
世界トップクラスの酒のプロたちが認めた日本酒だからこそ、世界中の酒類関係者への影響力は絶大です。
強豪ひしめく日本酒部門の中で、木下社長は「もしかしたら」という思いを持っていました。
それほど、「大吟醸 極醸 喜多屋」の完成度に自信があったそうです。
そして、木下社長の「もしかしたら」が本当のことになります。
intensity and purity
IWC2013の日本酒部門の最高賞「チャンピオン・サケ」に、「大吟醸 極醸 喜多屋」の名前が呼ばれたのです。
IWCの責任者で、世界で最も優れたソムリエの1人であるサム・ハロップ氏は「大吟醸 極醸 喜多屋」について
「intensity and purity(芳醇さと透明感)」と評しました。
まさに、喜多屋が追い求めていた理想の「芳醇爽快」という意味。
木下社長は「喜多屋のこれまでの取り組みは間違いではなかった」と感動で、心が震えたそうです。