福岡地酒の不遇
地酒で乾杯
福岡の清酒はかつて、酒どころとして知られる灘(兵庫)、伏見(兵庫)に並ぶほどの生産量を誇りました。
特に久留米市城島町の「城島の酒」は昔、「東の灘、西の城島」と称えられるほど、盛んに造られていました。
水郷・柳川市出身の日本を代表する詩人、北原白秋の実家は大きな酒蔵としても知られ、城島などの筑後地方には今なお、多くの酒蔵が残っています。
しかし、これだけ地域で酒が造られてきたにもかかわらず、福岡では地酒を飲む人が少ないとのデータもあります。
一般的に、新潟の人は新潟の酒ばかりを飲むと聞きます。秋田の人も、同様です。
地元の酒、地酒で晩酌するのが当たり前だと言います。
でも、福岡では地酒消費率が5割を下回るそうです。
半分以下の人しか、地酒で乾杯しないのです。
福岡産のお酒のあり方
福岡、博多の食事はおいしいと全国で評判です。
でも東京などから出張で来福された方に聞くのは、「飲み屋に行って、料理はおいしいのに、福岡のお酒が置いていないのは残念」との不満の声。
確かに、数年前までは、福岡の飲食店に並んでいる酒は、東北など福岡県外のものばかり。
焼酎はもっと悲惨です。
いまだに黒霧島(宮崎)など南九州産のものばかりです。
愛でるきっかけ作り
これでは、いかん。
飲食店にお酒を卸す、われわれ友添本店など酒屋の責任でもある。
だから、友添本店では、福岡の全酒蔵の酒を取り扱い、福岡の地酒を応援しようと決めたのです。
ただ、実際に福岡の全蔵の酒を取り寄せようとした時、問題があることに気づきます。
全蔵の酒を取り扱う問屋がなかったのです。
つまり蔵によって、酒の卸ルートがばらばらだったわけです。
全蔵共通のルートがなければ、福岡の地酒は、酒屋に認知されないし、消費者に広がっていかないのではないか。
私、友添健二は、知り合いの問屋にお願いし、全蔵の酒が手に入るルートをつくってもらいました。
問屋にルート開拓を頼んだのは、友添本店だけが全蔵の酒を手に入れることができても、福岡の地酒にとってのメリットはないと思ったからです。
多くの酒屋に福岡の地酒を並べてもらうことで、福岡の人が福岡の酒を愛でるきっかけになる。
そうして福岡の酒蔵が元気になれば、回り回って、われわれ酒屋も繁盛すると思ったのです。
地酒を味わう
友添本店では、お店のある福岡市中央区の春吉地域の飲食店と協力しながら、「晴酒はしご」や「晴好夜市」といったイベントに参加し、福岡の地酒に触れる機会を増やしています。
イベントでは、「今まで知らなかった酒ばかりやけど、福岡の地酒っておいしっちゃね!」という感想を多く聞きます。
われわれ酒屋の仕事は、お酒の素晴らしさを、酒蔵に代わって消費者に伝えること。
「友添健二の大吟醸で大往生」では、酒屋歴30年以上の友添が、おいしい福岡のお酒の中でも、トップのものをみなさんに紹介します。