瑞穂菊酒造とは?
かつての炭都・福岡県筑豊地方には、多くの酒蔵があり、炭鉱の労働者が毎日、地酒を飲み交わす姿が見られたものです。
1960年代、国のエネルギー政策が石炭から石油に移り、それにともなって炭鉱の閉山が続き、人がどんどん筑豊の外に出ていきます。
当然、地酒を飲む人も減り、造り酒屋も1軒、また1軒と看板を下ろしていきます。
筑豊から炭鉱が消えて40年が過ぎましたが、今なお地元の方に愛されている酒蔵が瑞穂菊酒造です。
飯塚市で創業して150年を超える造り酒屋について、私、友添健二は、地域を本当に大切にされるなあと感心します。
特に地元、筑豊のお米にこだわっている姿に共感を覚えます。
合鴨米で酒ができないか?米と合鴨で晩酌ができないか?
6代目の小野山洋平社長は「地元の人とつながらなくちゃ」と思う経験が、今につながっていると言います。
それは20代で杜氏になった当初のこと。
周囲から「大丈夫か?」と心配される若手醸造家のもとに、隣町の農家、古野隆雄さんが訪ねてきます。
古野隆雄さんと言えば、NHKのプロフェッショナル仕事の流儀に取り上げられるほどの有名な農家。
早くから無農薬農法を実践し、合鴨農法米をつくる農家として知られています。
「合鴨米で酒ができないか? 米と合鴨で晩酌ができないか?」
そんな古野隆雄さんの頼み事に、若き日の小野山さんは応え、出来上がったのが「一鳥万宝(いっちょうまんぽ)」という日本酒でした。
合鴨米は食米で、酒米(酒造好適米)ではありませんから、きれいな酒というよりは、味わい深い酒ができます。
小野山さんによると、古野さんは、自分たちの畑で育てた食材作った料理をあてに、自らの田んぼで育てたお米で醸したお酒で晩酌したい、と思っていたそうです。
そんな農家の想いを実現させた「一鳥万宝」は、造り始めて20年を超え、今や蔵を代表する日本酒の1つとなっています。
古野さんとの出会いから、小野山さんは「地元の農家とつながっていくのが、瑞穂菊酒造の1つの道だ」と実感したのだそうです。
今や瑞穂菊酒造の日本酒づくりで使用する米は、地元筑豊産が全体の6~7割になるそうです。
地元の自然の恵みに育てられた原料で、まさに「正真正銘の地酒」造りを行っているのです。
150年という歴史ある酒蔵の中で定期的に行われるクラシックコンサート
最後に、私、友添が瑞穂菊酒造と聞いて、思い浮かぶことを書いておきます。
150年の歴史ある酒蔵の中で、定期的にクラシックコンサートを開いているのが印象的です。
小野山さんの娘さんが音大でバイオリンを専攻していることもあって、歴史感じる空間で音楽をBGMにお酒が飲めるのだそうです。
酒と音楽。
何とも優雅な空間じゃないですか!
全国にはクラシック音楽をもろみに聴かせ、発酵させるという酒蔵もあります。
音楽を酒造りに応用しているわけではないとはいえ、瑞穂菊酒造の蔵で醸された日本酒が、どんな味わいか、ちょっと興味がわきませんか?