杜の蔵とは?

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かつては、全国屈指の酒蔵密度を誇った久留米市三潴町。
その「みずまの酒」を、今なお造り続けているのが、杜の蔵(もりのくら)です。
私、友添健二は、製造するすべての日本酒に、アルコール添加をしない純米酒蔵のイメージが強いです。

当時は怖さもなく、勢いでやっていた

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「ピュア」思想と言いましょうか。
今でこそ、“アル添”しない純米酒が若手の蔵元らを中心にもてはやされ、全国各地の酒蔵で造られています。
ただ、杜の蔵は他の蔵に先駆けて、2005年に九州初の純米酒だけを造る蔵に転換しました。
今から約15年も前のことですから、全国を見渡しても、純米酒だけしか造らない蔵は少なかったと思います。
もちろん、今でも純米1本でやっている造り酒屋は、そんなにないと思います。

友添は杜の蔵が純米酒蔵宣言をされた時、「何と思い切ったことをしたもんだ!」と、感心したのを思い出します。
久しぶりに杜の蔵を訪れて、当時のことを5代目の森永一弘社長に聞いてみました。
すると、「今なら絶対にできません」と苦笑いし、「当時は怖さもなくて勢いでやってしまいました」と頭をかきます。
酒蔵経営のことを知れば知るほど、純米酒1本でやっていくことの難しさを感じるんだそうです。

経営5代、杜氏も4代に渡り・・・

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私、友添の酒屋としてのポリシーは「人と付き合う」。
有名な銘柄だからでなく、その酒蔵にいる方たちの人柄が気に入るかどうか。
その点でいうと、杜の蔵の方々から伝わるチャレンジスピリッツは、好感が持てます。

森永家が5代にわたって経営を続ける一方で、酒造りをしている杜氏も末永家が4代にわたって引き継いでいる珍しい蔵。
創業は1898年(明治31年)。
200年も300年も続く酒蔵が多い日本酒業界を見れば、杜の蔵の歴史は決して古くありません。
酒どころの三潴で、後発の造り酒屋だから、他の蔵と違うことをしていかないと生き残れないとの考えが、今も根付いているようです。

面白いのが、ピュアでフレッシュな純米酒に価値を見出したかと思えば、真逆の熟成日本酒づくりにも力を入れているということ。
「独楽蔵」シリーズは、日本酒のジャンルで言えば「古酒」になりますが、森永社長は「時間をかけて飲み頃に育てた熟成酒です」とこだわりを語ります。

ワイン通が好んで手に取る熟成酒「独楽蔵」シリーズ

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ヒントは、酒蔵の屋根裏から、偶然見つかった1941年(昭和16年)の日本酒。
「泥水のような色。でも、見た目からは想像できないような透き通った感、お酒の強さを感じたんです」と森永社長は力を込めます。

日本酒と同じ醸造酒のワインは、熟成が当たり前の概念。
5代目は、日本人の食も、肉やスパイスなど西洋化している中で、今の食生活に無理なく合わせられる清酒が熟成酒だと思い、チャレンジしたのだそうです。

出来たては荒々しいお酒も、時間が経つにつれて、角が取れ、一回りも二回りも成長する熟成酒。
ワインの世界に詳しい方は、フレッシュな「杜の蔵」シリーズよりも、「独楽蔵」シリーズを好んで手に取るそうです。

私、友添も、森永社長の話を聞いて、共感します。
食中酒は今、私の中でものすごく大きいキーワードだからです。
かつての食事を邪魔しない酒から、今は食と一緒にハーモニーを奏でる酒に、食中酒の考え方がシフトしているからです。
いやあ、独楽蔵の誕生秘話を聞いていて、友添はワクワクしてきましたよ!

敷地内には弓道場が・・・!

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最後に、独楽蔵で晩酌する際の肴になりそうなお話を。
杜の蔵の敷地内には、なんと弓道場があります。
そして、森永社長の祖父と曽祖父は、弓道の最高位である10段だったというから驚きです。
国内で片手の指ぐらいしかいない達人なんです。

今でも弓道場は現役です。
しかも、5段以上の上級者ばかりが練習をする場だというから、なんともすごい。
日本中を探しても、敷地に弓道場がある酒蔵は、杜の蔵以外に見つからないんじゃないでしょうか。
しかも、10段を2人も輩出した道場なんて!

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